メメントモリ(令和2年9月9日)
北野老師筆
<世界>
8/29死者数83万1827人(+6029)、感染者数2446万6482人(+28万4452)
9/5 死者数86万8810人(+5682)、感染者数2631万505人(+27万3101)
<日本>
8/29死者数1261人(+20)、感染者数6万6736人(+880)
9/5 死者数1352人(+17)、感染者数7万1092人(+590)
上の数字は新型コロナウィルスによる世界と日本における
死者数と感染者数の推移を示しています。()内は前日よりの増加数である。
毎日公表されるこれらの数字を見て何を感じるか。
数字に慣れっこになっていないか。
私は特に死者の増加数に驚きます。
日本では一週間で約90人、一日当たり13人、
世界ですと一週間で約37万人、一日当たり5300人の方が亡くなっています。
驚くべき数字だと思うのです。
このようなことにつけても改めて思いますのは、
人間の死がいつ襲ってくるかもしれないということです。
近年、大地震や特別警報級の台風や大雨などによる被害も頻発しており、
そういった大災害も決して他人事ですますことのできない時代になりました。
そこで肝心なことは、
災害に備えるということももちろん大切ですが、
何時襲ってくるかも知れない死に対しても
心の準備をしておくことです。
死に直面してからでは「遅八刻」で遅すぎます。
ヨーロッパには古くから
「メメントモリ(死を忘れるな)」という言葉があります。
それは人々にいつも死を想起させる標語だったのです。
明治期に活躍した原担山(1819-1892)という禅僧は、
葬儀で導師を勤めていた折り、
参列者に向かって「お前らも死ぬぞ!」と言ったそうですが、
それは「メメントモリ」に代わる禅僧の一喝だったのです。(注)
「人間は死すべき存在である」と言った
現代の哲学者の言葉を待つまでもなく、
釈尊以来、死は生死とひとくくりにして
仏教の根本問題となってきました。
禅は正に生死超脱の道にほかなりません。
(注)原担山の話:拙著『禅に親しむ』11頁以下を参照。