恕(おもいやり)
道は恕恩(じょおん)にある。 恕恩とは思いやることである。
人の心の食い違いは常のことだ。 男と女と、年寄と若者と、賢いものと愚かなものと、元気なものと病人との間で、最後はついに食い違いが生じる。
相手の方が尤(もっと)もだと思いやれば腹は立たない。 この思いやるということ一つで、あらゆる道をつらぬくべきだと教えたのは孔子様である。
我が心にかなわずとも、相手の身になれば尤もなことだ、と思えば心が安らかになる。
香樹院金言録
*香樹院:1772-1858(安永元年~安政5年)、新潟(越後)生まれ。 妙好人として知られている。
*論語(衛霊公)に次のように出ている。
「子貢問うて曰く、一言にして以て終身これを行なうべき者ありや。 子の曰く、其れ恕か。 己の欲せざる所、人に施すことなかれ」(子貢がおたずねしていった、「ひとことだけで一生行なっていけるということがありましょうか。 」先生はいわれた、「まあ恕(思いやり)だね。 自分の望まないことは人にもしむけないことだ。 」(岩波文庫)
*大雲好日日記95「思い遣り」参照。