<寄稿>オーストラリアの禅2020

   ジョン・ヨルゲンセン(John Jorgensen)

 

トキワサンザン(禅塾近辺)

 

2016年の国勢調査によると、オーストラリアの仏教徒の数(自己申告)は563,677人で、総人口の2.4%弱でした。これらの人達の33%はシドニーとその郊外に住んでおり、30%はメルボルンとその郊外に住んでいます。

 

ニューサウスウェールズ仏教評議会の2020年、年次報告書によると、そのメンバーの6%は禅宗とされています。この数字がオーストラリア全体の仏教を代表するものと仮定すると、約3万人が禅宗関連の仏教徒ということになります。「禅宗関連」とは、日本の禅、中国のチャン(Chan)、韓国のソン(Seon)、ベトナムのティエン(Thien)、そして主にアメリカで実践されている禅を意味します。

 

オーストラリアは移民社会であるため、ニューサウスウェールズ州仏教評議会は、そのメンバーの約4分の3が「東洋仏教徒(Eastern Buddhists)」、すなわちアジアから宗教と共に移住した移民とその子供たちと推測しています。たとえば、南ベトナムの陥落後、多くのベトナム難民がオーストラリアにやって来ました。大多数はカトリックのキリスト教徒でしたが、仏教徒も多く、その中にはティエン(禅)を継承する人達もいました。

 

一部の民族コミュニティは、自分たちの宗教を実践し、子供たちのために自分たちの文化を守るために、寺院や僧院を設立しました。したがって、一部のZen組織は、中国語、ベトナム語、または韓国語のネイティブスピーカーのみに対応しています。これらの「東洋仏教徒」組織のいくつかは、特に組織が僧侶や尼僧たち(サンガ)によって運営されている場合、彼らの伝統的慣習と規律を維持しています。

 

対照的に、アングロサクソン系ヨーロッパ人の「禅」は、禅の宗派の1つを厳格に遵守するもの(少数派のようです)から、最も広い意味での「禅」を実践するものまでを含みます。ほとんどのグループは在家中心であり、特に夕方に週に1、2回、週末には普段より長い瞑想の会を開催し、時折より長時間に及ぶリトリート(摂心)も開催しています。規律を守り実践する僧堂もいくつかあります。

 

一方これらのグループの中には、「禅」を単なる瞑想法の一つとして、仏教の教義に信を置くことや、仏性、如来蔵の考えなどを無視するものもあります。こうしたことから、キリスト教徒の禅、あるいはキリスト教の文脈での禅(例えば、「The Way of Zen」はイエズス会の司祭であるアマ・サミーが率いるものです。インド人のアマ・サミーはカトリックの司祭になり、愛宮ラサール神父の助力で日本に行きました。そして、三宝禅教団の山田耕雲老師のもとで1982年に印可を受けています)といったものもあります。

 

また場合によっては禅はヴィパッサーナやマインドフルネス瞑想と一緒に教えられています(例えば、クアンイン瞑想センター)。良く言えば、これは普遍化とも解釈できるかもしれませんが、逆に異なる瞑想の実践との教義的基盤の混沌とも解釈できるかもしれません。また、オーストラリアの状況に適応させてはいるものの、伝統的な僧堂の規律と実践を維持しようとしているグループも存在しています。

 

以上、オーストラリアにおける禅と禅組織は、主に2つの影響の産物です。一つは主要な大都市圏、特に米国で広まった禅の影響、そしてもう一つは1970年代以降のアジアからの移住の歴史の影響です。(伊藤 靖 訳)

*ヨルゲンセン氏から寄せられた文章は長文であったため、ここにはその最初の部分のみを訳出した。全文(英文)は下方をクリックすることによって見ることができます。

Zen in2020 Australia

 

筆者ジョン・ヨルゲンセンについては「大雲好日日記42」を参照。

大雲好日日記-42