因縁の糸(令和4年5月25日)
あやめ(長岡禅塾)
華厳経の世界観の一つに、
「事事無礙法界(じじむげほっかい)」という見方があります。
それは事物と事物がバラバラにあるのではなく、
それらが礙(さまた)げあうことなく
重重無尽に関係しあっているのが、
この世界の現実であるという見方です。
目に見えないから意識していないのですが、
華厳の教えによれば、
実は私は世界中のまだあったことない見たこともない
全ての事物と不可視の糸で結ばれているのです。
それが何かの縁で目に見えるようになる。
私がいま親しくしている人たちは、みなそういう人たちなのです。
しかし事事無礙法界の本来から言えば、
それはそのほんの一部が現実化したものにすぎません。
まだまだ会えていなく見ていない人物や事物が、
無限に存在します。
何とかそれらに出会いたいものです。
そのためにはどのようにすればいいでしょうか。
見えない因縁の糸を見えるようにするには、
どのような工夫が必要でしょうか。
それにはまず「縁」ということを大切にしなければなりません。
私たちは眼前にあるものに対しても大抵の場合は、
そのことがたまたま何かの縁で出合っている
稀有なことなのだというようには意識しません。
その結果、折角の出合いがたい機会を
みすみす逃してしまったいるのです。
そうして本来豊饒なこの関係の世界を貧しくしてしまい、
人生そのものを瘦せたものにしてしまいます。
私たちは相互に見えない糸によってすでに結ばれ、
すでに出会っているのです。
そのことを知らずに毎日過ごしてきているとは、
何とも惜しい事ではありませんか。