独甫和尚の歌(令和4年7月6日)

 

クチナシの花(長岡禅塾)

 

独甫和尚とは

広島県三原市の禅寺で住職をしていた岡田独甫(どくほ)のことである。

 

和尚は短歌を愛好し、

その歌はしばしば「朝日歌壇」に掲載されていた。

 

その詠みっぷりを言えば、

人間臭さたっぷりで、しかもあけっぴろげなところに、

どこかにくめない味をだしていた。

それが和尚の短歌の魅力だった。

 

そんな和尚の歌を紹介してみよう。

 

〇スケールは ゴーンに比して 微々たれど わが心にも 強欲存す

 

〇長生きで 幸ひなりとは 限らぬに 欲張りの吾は 長生き願ふ

 

〇寝床にて 明日したきを 考ふる 生きて目覚むる 保証なけれど

 

〇来年も 生きているだろうと 夏パジャマ 夏の終わりに 半額で買ふ

 

〇海近き 寺に住する 僧の吾は しばしば魚を 貰ひてさばく

 

〇檀徒より しばしば魚を 貰うため ホームセンターで 「ウロコ取り」買ふ

 

〇今宵また 風呂から上がり 酒を飲み 身に宿るガン ともどもに酔う

 

〇癌を病み 先わからねど 来年も 忘年会を 子と開きたし

 

〇呆(ほう)けたる 爺が葬儀後 僧われに 「儲(もう)けたのう」と 声を掛けくる

 

〇葬式の お布施の包みが 空っぽで 待って欲しいと 紙片がありぬ

 

〇省みれば 上求菩提 下化衆生 おろそかにして 布施受け生き来

 

これらの歌を見て、にべもなく破戒の僧ということなかれ!

6月26日の「朝日歌壇」にはこんな歌が出ていた。

「菩提寺の 五月一日は 独甫の忌 核の無き世を 願ひし歌人」

(広島市 天野房子)

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