大雅窟遺風(二十二)

 

 

<下語>

 

床の間の軸と花との関係は下語的であります。

花は軸を離れて、

しかもそれに即したように活けられなければなりません。

綺麗に掃き清められた庭に、落葉両三片置く

という趣向も下語的展開であります。

茶室における立居振舞、主客の対話等すべて日本の伝統的文化では、

基本的には下語的たることが好ましいとされてきました。

(『悟りの構造』)

 

下語(あぎょ)とは、禅宗で師匠と弟子との間で問答がなされる折り、提示された一つの見解(けんげ)に対し、その見解を離れて、しかも見解に即した語を詩の形で表現することを言う。大雅窟によれば、この方法が日本では日常的芸術的に発展したというわけである。しかし、そうした下語的展開が日本の芸術的世界において発展したのには、その根本に何ものにも執着しない「空」の思想が浸透していたのでなければならない。禅が日本文化の主要な一面を形成すると言われる所以である。 

 

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