令和5年をちょっと回顧する(令和6年1月13日)
ある日の老僧(童子に説法する)
昨年令和5年一年間を
その年に朝日新聞の歌壇・俳壇に掲載された
短歌・俳句を拾いながら少しだけ回顧しておきたい。
〇初夢のなかにみな居てみな若し
(笠井 彰)
*昨年11月に傘寿の同窓会あり。みな老人顔で誰だか判然とせず。
〇そんなこと言うたん私? あほやなあ 旧友(とも)の記憶に残るあの頃
(桑理孝子)
*同窓会でも、こんな会話がありそうである。
〇痛いとは生きてゐること死にたれば 痛いと言はず痛いといへず
(庭野治夫)
*さはあれども・・・ウム、痛い!(神経痛に悩まされた一年だった)
〇花待たず我が青春の大江逝く
(相坂 康)
*ノーベル賞作家の大江健三郎、昨年3月に逝去。私も学生時に愛読した。
〇上を向け前を向くべし八十歳 転ばぬやうに下を見ながら
(坂本捷子)
*はい、転ばぬよう気をつけます。(最近、よく躓きます)
〇人類は進化の失敗作なのか チャットGPTよ答えよ
(永谷理一郎)
*昨今の国の内外を観ての慨嘆。(人類は実に愚かだ!)
〇手紙とはゆつたりとしたたましひの 手渡しであるデジタルの世に
(滝 妙子)
*印刷されただけの手紙・葉書ほど味気ないものはない。。タイパはNG。
〇阪神が負け続けていた日々に 吾は子を授かった母をなくした
(星田美紀)
*阪神が優勝するまでの18年の間に私にも孫ができ、母を失った。
〇街なかの丸善に書を買いに行く 翡翠(かわせみ)色のクロスバイクで
(中川大一)
*昨年も京都に行ったらよく丸善に立ち寄ったものだ。
〇雲水の朝粥啜る寒椿
(綽 光明)
*禅塾のいつも変わらぬ冬の粥座(朝食)の風景でもある。
〇「唯生きてゐる」と記しし同年の 荷風の日記に傍線を引く
(豊 万里)
*生きている時はただ生きていることだけに集中。粥座のときはただ粥座のみ。これ禅の極意である。
〇老僧と前世を笑ひ狸汁
(菅原 悟)
*老僧は前世についてどんな話をされたのやら。化かし合いなら、日ごろ説教で腕を磨いている老僧の勝ち間違いなし。老僧の一日はかくのごとくホラを吹いて終り、また一年が暮れて行く。