大雅窟遺風(二十七)

 

大雅老師との邂逅

篠原大雄老師(永源寺派元管長)

~跋文に代えて~

 

篠原大雄老師(禅文化研究所ブログ禅より)

禅文化研究所のブログ

 

私は、大学時代の四年間、長岡禅塾で、同じ塾生として、大雅老師と隣室で生活を共にして、森本省念老師の指導を受けました。

 

お互い貧乏で、煙草も碌に買えず、確か、二人で廻しのみしていたこともありました。しかし、時折、バーや小料理屋に連れて行った貰ったこともありました。(こういうことだけはよく憶えています。)フランス語を勉強したり、京大の哲学の講義を聴きに行ったり、小説を書いたりしておられたことも思い出します。

 

そのうち、知らず知らずのうちに老師の感化をうけ、いつの間にか、老師に心酔するようになりました。老師の簡素な生活ぶり、言動のすっきりしていること、直感の鋭いこと等々、全てに惚れ込んでしまいました。やがて、禅僧にならないかと勧められるようになり、老師みたいになれるのなら、という想いに駆られ、とうとう坊主になってしまいました。

 

その時に、二つの誓いをさせられました。「一つ、妻帯せざること。一つ、修行成就のこと。この二つが守れないのなら出家するな。」厳しい指示でしたが、今日まで何とかおうせの通りにやってまいりました。

 

修行は建仁寺僧堂でやりましたが、ここで学んだのは僧としての儀式的なことが主でした。禅僧としての生きる方向と精神的な根っこの部分は、全て老師に叩き込まれ、薫陶をうけてきたと思っています。不肖の弟子で、老師の道力と眼力にはまだまだ及びもつきませんが、いつの日か老師のご恩に報いられるように、日々研鑽を積んでいます。私は、老師の命令なら、人殺しと盗み以外は何でもやりたいといつも思っています。

 

そうそう、もう一つ大事なことを忘れておりました。老師には、文化人的な一面があり、とても粋で、おしゃれで、きれい好きな人だということを皆さんご存知でしょうか。大いに雅を愛する人なのです。(金岡重雄編「手作り寄稿集」1999年) 

 

*篠原大雄老師は2011年に遷化されました。

 

 

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