禅塾の庭は綺麗だな
これと云って何んの変哲もないくせに
いついっても掃いてある
何時、誰れが
問えども答えぬ暗昏々
黙照禅の庭なのか
いや、いやそうではなさそうだ
パン屋の親爺もおばさんも
来る人々が感心し
心の奥まで清まると
口に出して言うからは
言わせにゃならぬその訳が
庭の小石や小枝にも
多分あるに相違ない
こうしてみればこの庭は
機(き)を蔵して言句を出す雲門の機(はたらき)か
言句を蔵して機(き)を出す臨済の機(はたらき)か
あれあれごらん、あれごらん
梅の小枝にとまってる
小鳥は何んにも知らないで
けろりんかんとすましてる
さてさてそれでは法眼宗でござったか
うん、なるほどと肯いて
元の小枝をながむれば
もはや小鳥は何処へやら
全く馬鹿にしてござる
松吹く風がさらさらと
右のお耳に言いました
ここのところが知りたくば
箒を持ってもう一度
塾のお庭を掃きなさい
左の耳にも言いました
「雲門さまが言ったげな
庵内の人、何んによってか庵外の事を知らざる」と