「禅塾生活は人生の土台」 大須賀康人
私は1996年の7月から大学院を卒業するまでの約3年間、長岡禅塾でお世話になりました。
禅塾を出てから3年間、外資の民間企業に勤め、その後小さな会社の経営に携わらせていただき10年ほどになります。
まだまだ若輩者ですが、禅塾で経験した一つ一つの生活体験が今の自分の人生の土台となっていると感じています。
禅塾の生活は朝が早く、坐禅と作務が基本です。
入ってしばらくは右も左も分らず、ただ言われたことをやっていただけでしたが、今思うとそれが結果的に良かったような気がします。
理屈ではなく、禅塾での実体験を通して身につけた集中力や行動力、粘り強さなど、この時期に養った感覚は今でもかなり役立っています。
また、素朴でシンプル、かつシャープな禅の審美眼は、実業の世界でのサービス商品づくり、社会の仕組みづくりに応用できると感じています。
あの画期的製品を生み出し続けてきたApple社の創業者スティーブ・ジョブズ氏も禅に興味をいだき、かなり造詣が深かったと言われており、実業に禅を応用することは筋違いかもしれませんが、実業の世界でこそ禅が有用であることを証明する一つの好例だと思います。
さらに、老師の話などで心に残った事やメモしてある事を、今でもたまに思い出したり見返したりしています。
そんな時、あの20代半ばという時期では分らなかった、いろいろなことが少し分った気がする時があり、そういった気付きが何かしらの判断の根拠になったりすることがあります。
こういった禅の世界を学生の間に実地で体験できる場所はそれほど多くありません。
そして誰もが体験できないからこそ、のちのち貴重な経験となってきます。
少しでも禅塾に興味をもたれたならば、何か大きなことを期待せず、まずは思いきって禅塾の生活に飛び込むことをお勧めします。
何も期待せず、ただ禅塾生活を一生懸命にやり続けた経験そのものが、後々あなたの仕事や人生のどこかで必ず糧となる日がやってきます。
少なくとも、今の私はそのことを大きく実感していますし、これからも、もっと禅の世界に触れていきたいとも思っています。
(同志社大学 平成8年~平成11年在塾)