臘八大摂心(令和5年11月29日)
ツワブキ(長岡禅塾)
明後日、十二月一日から八日明けまでの間、
禅の専門道場では臘八大摂心(ろうはつおおぜっしん)がはじまります。
長岡禅塾も例外ではありません。
摂心(せっしん)とは
「散りじりになりやすい心を一つに集めること」で、
接心とも表記します。
また臘八(ろうはつ)とは十二月八日のことで、
その日は釈尊が成道された日に当たります。
この目出度い日をめざして、
八日明けまでの間、門外不出、不眠不休で坐禅行を行うのが臘八大摂心です。
ただし、長岡禅塾は学生のための道場ですので、
規矩は専門道場よりもやや緩めに決められています。
とは言え、一年間の禅塾生活のなかで
最も厳しい、したがって最も充実した修行の期間であることに変わりはありません。
私がはじめて大摂心に参加したのは
40代の初めころだったと思います。
道場は相国寺の僧堂でした。
とくに臘八は命取りの行だと言い聞かされていましたので、
もしものことを考えて、その摂心の始まる前に
ひそかに両親に会いにいったりしていたことを思いだします。。
その摂心中にいろいろのことを経験させていただきました。
食事の作法なども在家とは異なりますので、
最初のうちは戸惑いましたが、
よく考えて見ると実に合理的にできていて感心させられました。
一週間の摂心をやり終えて禅門を出たときのことは
不思議な経験として今でもよく覚えています。
見なれていた世界がまったく違って見えたのです。
この光景を説明することは難しいのですが、
同じような経験をした人の文章を以前に読んだことがありますので、
それが幻視であったとは思いたくないのです。
もしかしたら深層のアラヤシキの見た景色であったかもしれません。
それから四十年ばかりが過ぎました。
その間、何回も摂心を経験してきましたが、
臘八大摂心が近づくたびに、その摂心を通して一年間の心の垢を落とし、
新しい年を迎えたいものだという気持になります。