忌十成(じゅうじょうをいむ)(令和7年2月23日)
明石海峡大橋
禅をまったく知らない人の口から、
突然、禅の言葉が飛び出してきたりして、
こちらがびっくりすることがある。
つい最近、イチロー氏の米野球殿堂入りが決定したのであるが、
その際、それを決める得票数が期待されていた満票ではなく、
惜しくも一票足りなかった。
その時にイチロー氏は、つぎのような感想を述べたとされている。
「普段自分が信じていることの一つに、完全にはなれないけど、
不完全であることは分っているんだけど、完全を目指していく。
だけど足りてない。その繰り返し。改めて知らせてくれた」。
だから、「一票足りないは僕にとって完璧」だ、と。
禅の世界に「忌十成(じゅうじょうをいむ)」という言葉がある。
「完成したという思いを避ける」といった意味である。
完成したと思ったら、そこで向上心は失われてしまう。
そうなると、その人はそこまでの人で終ってしまうのである。
イチロー氏は禅のことはご存じないと思う。
しかしながら「忌十成」という点では
彼の心境は禅の境地と同じである。
禅は高尚難解なものと思われている。
それは本来言い得ないことを言葉で説明しようとするからである。
実際をいえば、禅は普通の人の日常生活でも躍動しているのである。