大雅窟遺風(二十一)
<身学道>
今日、日本における大学教育の欠点の一つは、
あまりに西洋風の概論的教育が多すぎて、
即物的実際的教育を行わないところに、
学生自身は気がついていないかも知れませんが、
不満があるのではないかと思います。
農学部の学生が土を耕さず、
宗教学の学生が宗教的行を行なわないのですから、
身についた充実感が湧いてまいりません。
(古代)中国の伝統的教育は行学一体であり実際的でありました。
(『悟りの構造』)
大雅窟は他の本の中でも日本の大学での知識詰め込み重視の教育を難じておられる(『無相の風光』)。しかしこの傾向はどうも日本だけのことではないようだ。と言うより、その原型は西洋にあって、明治以降、西洋の教育方法を熱心に採り入れてきた結果であるようにも思える。東洋には、従来、西洋では軽視されてきた身体の活用を重んじ、その実地の経験を通して知識を涵養する伝統が存在した。実験は科学的操作としてだけではなく、人間を薫陶する上でも大切なことであるに違いない。