怒ってはならない

 

激怒を絶ち瞋怒を棄て、人が自分と違うからといって怒ってはならない。

 

人には皆それぞれに思いがあり、それぞれ執するところがある。彼が是とすれば我は非とし、我が是とすれば彼は非とする。我は必ずしも聖人でないし、彼は必ずしも愚人ではない。我も彼もともに凡人にすぎない。

 

是非の理をどうして決定することができようか。互いに賢くもあり愚かでもある。それは耳輪に端がないようなものだ。

 

それゆえ、彼が怒っていたら、我が間違っているのではないかと心配りをせよ。我がこうだと思っても、他の人たちと行動をともにせよ。

                                                   弘法大師『十七条憲法』

 

*「腹が立つというその原因は欲から来るのである。すなわち貪欲から来るのである。貪欲心が満足されぬ場合に必ず瞋恚(しんい)が起る。何かを求めてそれが意の如く得られない時に腹がたつのである、それは要するに己の愚痴から来るのである。」(蜂屋賢喜代『佛天を仰いで』)

*貪(むさぼり)・瞋(いかり)・痴(おろか)は仏教で三つの「毒」(三毒)とされています。怒りは世を修羅界に一変させてしまう恐ろしい(気の)毒であります。

 

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