且坐喫茶(お茶でも一杯、どうぞ)(令和5年8月12日)
且坐喫茶 (しゃざきっさ)
「且(しばらく)く坐して茶を喫せよ」
山の湧き水(長岡禅塾近辺)
これまで4回にわたって「生死(しょうじ)」について書いてきました。
つぎは話題を「大雅窟遺風」にもどして、
また4回つづきを書いてみたいと考えているのですが、
その前にちょっと一息入れるために、
禅味豊かな「お茶」を皆さんにお出ししたいと思います。
よぉーく味わってみてください。
猷禅玄達(ゆうぜん・げんたつ、1841-1917)老師が絵を描いておられた。
周りは竹藪だから、やぶ蚊がやってくる。
そこへ一人の婆さん来て、いつまでも長居をしておった。
すると、
老師:「ああ、ここにも蚊がおりますなあ」
婆さん:「ああ、蚊もいるわいのう」
老師:「蚊が出てくるからな、人が長くおらんでいいわい」
婆さん:「ああご無礼いたしました、ではおいとまいたしまする」
老師:「お前はいいわい、お前はいいわい」と言って笑っておられた。
この茶飲み話は舌で味わい、喉で味わい、最後は腹で味わうくらい、
何度も味読していただく必要があります。
ある老師はこの話を、
「もう言いたいこと言うて、それがまた教えにもなり、
むこうの感情を少しも損なわない、天真なところがそうさせておる。
自分に何か少しでも私欲とか何か“とらわれ”の心があったらできません」
と評しておられます。
今年の7月は日本の観測史上、最も平均気温が高かったそうですが、
こういう話を味わいますと、
一陣の涼風がスーッと身辺を吹き抜けて行く感じがしませんでしょうか?